JSPS科研費補助事業成果公開国際シンポジウム「人口減少時代における高等教育の再構築」
2026.7.30
発表題目「大学減少は日本社会をどう変えていくのか? ~「定員の適正化」と「質保証」を考える~」関西国際大学 学長 濱名 篤
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(1)全体のテーマ
人口減少時代における日本の高等教育の再構築 中心論点は以下の5つの政策課題:
定員の適正化
質保証(質改善)
大学統合・再編
留学生政策の再定義
高等教育と社会政策の接続(産官学連携)
(2) 中教審「知の総和」答申の問題意識
大学改革ではなく、人口減少・地域衰退・知の断絶を踏まえた「社会設計」指針。
しかし、キーワードの「定員の適正化」「質保証」は基準が曖昧で、大学に対応を迫る構造。
問題提起:
適正化とは何を整えることか
質保証は何をもって機能するのか
日本の高等教育はアジアの競合国の中でどこに位置するのか
(3) 「定員の適正化」の再検討
● 地域間調整
東京一極集中の是正と地方私大の定員割れ対策が同じ「適正化」とされている。
全国的な総枠や規模見通しが示されず、大学単位の自己調整に委ねられている。
● 分野間調整
医療・情報・AIなどは拡大、教養・人文は縮小傾向。
文理融合やデータサイエンス教育の可能性。
● 定員概念の再定義
従来は「多少の超過は良い」という運用だったが、今後は政策的統制手段へ転換。
留学生定員は例外運用が多く、政治的タブー化。
● 首都圏定員規制(2018〜2027年度末)
東京23区の定員増禁止 → DX分野のみ特例緩和。
日本は学生の首都圏集中度がアジアでも突出(人口比29.6%に対し学生比43.1%)。
(4)質保証から質改善へ
● 「質」の定義の不在
偏差値、充足率、定性的尺度が混在し、統一指標がない。
● 新方向:質保証+質改善
学修成果(Learning Outcomes)を社会的に共有する仕組みが未成熟。
認証評価機関の評価方法がバラバラで、メタ評価も不十分。
「偏差値評価から教育評価へ」の転換が必要。
● 機能別分化(2005年)との断絶
かつての「大学の機能別分化」枠組みが活用されず、質議論の基盤が空洞化。
(5)大学統合・再編・退場促進政策
● 現状
2016〜2025年で83機関が廃止(大学17、短大58)。
日本には韓国・台湾のような強力な統合交付金制度がない。
● 文科省の支援
統合前:科目共同化、連携推進法人
統合時:経営改革補助、専門相談
統合後:不利益緩和、在学生支援
募集停止後の教育維持支援など、制度改善が進行中。
● 必要施策
合併コスト支援
セーフハーバーの明文化
在学生支援の強化
統合・公立化の判断基準整備
統廃合データベースの整備
(6) 留学生政策の再定義
● 現状
「留学生40万人」は達成済だが、日本語学校・専門学校を含むため国際比較に不適。
学位取得型は約14.6万人で、OECD平均の半分以下。
日本は量・質ともに国際的に低位。
● 課題
地方私大の留学生依存構造
学修支援・生活支援・地域共生の不足
卒後VISA取得率の重視
留学生一貫支援体制の整備(入試〜生活〜キャリア)
● 適正化の方向
「量から質へ」だが、適正規模・地域配分は未提示。
教育支援体制・地域共生力・社会受入能力との整合が必要。
(7) 産官学連携と社会政策化
形式的連携が増える一方、実質的成果は一部大学に偏る。
大学政策は教育政策に留まらず、 労働力政策・産業政策・地域政策・外国人政策・税制政策と密接に連動。
「知の総和」は本来、省庁横断の知の接続モデルとして再構築されるべき。
(8) 地方中小私大の持続可能性
地域ニーズに合った大学像の追求。
産官学金連携プラットフォームの強化。
社会人受け入れ(公務員・教員の大学院誘導など)。
ICT・AI・オンラインによる距離を越えた教育提供。
地域を越えた相互扶助(“スープの冷める距離連携”)。
(9)結論(おわりに)
定員適正化を、学位分野再編・機能別評価・地域需給の統合軸として再構築する。
質保証の観点・尺度・資源配分を明確化し、実践につなげる。
留学生政策を地域社会との共生的国際化として再定義する。
社会人リスキリング市場の開拓と制度化。
高等教育を人材・産業・地域・外国人政策と一体の社会政策として位置づけ、社会的合意を形成する。
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